マラリア感染の免疫応答におけるT細胞とインタ-フェロンγの役割を免疫病理と防御免疫に分けて実験的に解析をすすめた。 1.強毒マラリア原虫による致死感染の免疫病理:これまでの研究結果から強毒マラリア原虫感染におけるマウスの急性死はCD8抗原陽性Tリンパ球が原虫抗原により活性化して肝臓に集積し、インタ-フェロンγを放出してマクロファ-ジ等の細胞を刺激して腫瘍壊死因子(TNF)産出を誘導する。これら一連の免疫反応が宿主に傷害的に作用することが示唆された。TNFの産生と生体傷害作用の関係を調べるために感染マウス肝臓より分離した単核細胞を標的細胞としてのL929細胞と一緒に培養したところ感染末期では抗TNF抗体で阻止される高い細胞傷害性が認められた。しかしTNFに対するポリクロ-ナル抗体を作成し感染マウスに投与したが急性感染死を抑制することはできなかった。この結果はTNFによる生体傷害作用の可能性を否定することが予想され今後さらに検討しなくてはならない。 2.弱毒マラリア原虫感染の自然治癒とその後の防御免疫の獲得:これまでの研究結果から弱毒原虫感染の自然治癒とその後の防御免疫の獲得には脾臓のCD4抗原陽性Tリンパ球の活性化とインタ-フェロンγの産性が必要であることが示唆された。感染初期の原虫血症の低下がTNF抗体の投与で抑制され、リコンビナントTNFの投与で増強されたことから初期の感染防御におけるインタ-フェロンγの働きはTNF産出の誘導であり、さらに感染後期ではB細胞に対し感染防御に働く特異的IgG2a抗体の産出を誘導することのこれら二面性があることが示された。
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