本研究はマラリア感染の免疫応答を、ネズミマラリア原虫Plasmodium bergheiとマウス(CBA系統)を用いて防御免疫と免疫病理の両面から解析を行った。 強毒マラリア原虫(NK65株)はマウスに致死感染を引き起こし、全てのマウスが2週間以内に死亡した。モノクローナル抗体投与によりCD8T細胞もしくはIFN-γの機能を抑えたマウスに強毒原虫の感染を行うと、原虫の増殖には影響が無かったがマウスの生存期間が有意的に延長し感染が慢性化した。感染の進行と共に肝臓中にCD8T細胞の集積が認められた。肝臓から分離したT細胞および単核細胞を培養するとIFN-γとTNF-αの産生が認められた。以上の結果は強毒原虫感染においてはCD8T細胞がIFN-γを産生し、IFN-γによって活性化された細胞によって組織傷害が生じると推測された。 弱毒マラリア原虫(XAT株)は強毒原虫から分離された突然変異株であり、マウスは一過性の原虫血症を示した後すべて生存し強力な防御免疫を獲得した。弱毒原虫感染マウスにモノクローナル抗体を投与して、CD4T細胞もしくはIFN-γの機能を抑えると致死感染となった。顆粒球増殖因子であるG-CSFをマウスに投与すると末梢血中の好中球が5倍増加した。このG-CSF投与は弱毒原虫感染に対して抑制的に作用したが、抗体投与によってIFN-γの機能を抑えると効果は消失した。抗IFN-γ抗体投与による感染マウスの抗体産生への影響はIgG2aアイソタイプが低下した。免疫血清よりIgG2aアイソタイプを分離して正常マウスに移入すると防御免疫がえられた。以上の結果は弱毒原虫感染においてはCD4T細胞の産生するIFN-γが好中球の活性化と防御抗体の産生を誘導し、感染が自然治癒することが示唆された。 本研究によってマラリア感染におけるT細胞の役割は抗原認識するサブセットと免疫応答の場合によって防御免疫と免疫病理に分れることが示唆された。
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