(1)熱帯熱マラリアおよびネズミマラリア原虫の雄性生殖体形成におけるCa^<2+>およびcGMPの役割について検討した所、Ca2+依存性代謝系阻害剤のW-7やTMP-8は強く阻害がしたが、EGTAやCa^<2+>channel阻害剤のnicardipineは阻害しなかった。また、細胞内cAMPの増大因子であるforskolin・cholera toxin・BL-3459も影響しなかった。しかし、cGMPやcGMP増大因子のnitroprussideの添加により著しい活性の増大が認められ、雄性生殖体形成がCa^<2+>およびcGMP依存性代謝制御システムにより制御されていることを示唆した。 (2)形態学的検討により、鞭毛放出に至るまでの雄性生殖体の形成過程はstageI〜IVに区別可能であった。活性化されると核は肥大してDNAは8倍となり(stage II)、その後、DNAは濃縮され、感染赤血球から脱出し(stage III)、さらに核が小核に分割されて(stage IV)、鞭毛放出に続くことが判明した。 (3)pH7.3では大半の雄性生殖母体は核酸合成を終了し、stage IIにまで発育していたが、pH8.0、37度では90%以上がstage Iに留まっており、核酸合成が温度(低温)依存性でpH非依存性であることを示唆している。 (4)各種イオンを用いてネズミマラリアにおける雄性生殖体形成について調査した結果、Na+/H^+/HCO3-/Cl-交換体かNa+非依存性のCl-/HCO3-交換体のいずれかが活性化されて誘導することが判明した。いずれもNa+/H+交換輸送阻害剤のアミロライドや、アニオン交換輸送阻害剤で阻害された。これらの交換体は、活性化を受けるとH+を放出し細胞内pHを上昇させ、それに続いてCa2+、cGMP濃度が高まり、生殖体形成を誘導するものと考えられ、事実、非許容条件下(pH7.3)で、細胞内pHの上昇因子であるNH4CL(10〜20mM)を添加することにより著しい活性の増大が認められた。
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