研究課題/領域番号 |
01570212
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川本 文彦 名古屋大学, 医学部, 講師 (40115556)
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研究分担者 |
藤岡 寿 名古屋大学, 医学部, 助手 (90165358)
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キーワード | マラリア原虫 / 生殖体形成機構 / オオシスト形成機構 / Na+依存性HCO3ー / Clー 交換体 / Na+非依存性 Clー / HCO3ー交換体 / 一価カチオン / H+ 交換体 / 細胞内 pH / X線分析 |
研究概要 |
(1)ネズミマラリア原虫をモデルとして、雄性生殖体形成の誘導における培地中のイオンの役割、特にカチオン/H+ 輸送体の活性化について調査した。その結果、Na+とHCO3ー あるいは膜透過性の一価のカチオンと Clーが存在すると、各々、Na+/H+/HCO3ー/Clー交換体や Na+非依存性Clー/HCO3ー 交換体の活性化が起こり、細胞内 H+ の放出から細胞内pH の上昇が誘導され、生殖体形成に至ることが判明した。また、[Na+][HCO3ー][Clー]の3種のイオンが存在すると2つのイオン交換体が同時に活性化されるために誘導活性の増大が認められ、細胞内 pH の更なる上昇の結果によると考えられた。そこで、無固定、無染色、無切片の凍結サンプルを用いたX線分析法を開発し、外界イオンの役割について調査した結果、各々の交換体の活性化により細胞内[Na+]の増大が観察され、3種のイオンの存在下では、2つの交換体の同時活性により、更に細胞内[Na+]の上昇が観察された。 (2)生殖母体形成機構については、熱帯熱マラリアのペトリディシュ法を用いた人工培積法を用いて、主としてcAMP及びCa2+依存性代謝系に関与する薬剤の影響について調査したが、cAMPや Ca2+の上昇因子の添加による生殖母体の形成誘導は認められなかった。この点については、更に継続して検討する。 (3)生殖体形成からオオキネ-ト形成に至る分化過程における細胞内情報伝達因子ならびに各種イオンの役割について調査するため、まず人工培養系の確立を計った。その結果、オオキネ-トをカイコ血清添加培地で培養することにより、幼弱オオシストへの分化に成功したが、その後の発育は認められなかった。そこで、Aedes albpictusの細胞株との共培養を行なった所、オオキネ-トの細胞内への侵入と幼弱オオシストへの分化発育が観察された。しかし、この場合もその後の発育は認められず、現在、培養条件の検討を行なっている。
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