研究概要 |
ヒトの日本住血吸虫感染において虫卵周囲の肉芽腫形式に関与すると考えられる宿主T細胞をクロ-ン化し、その反応標識的となる可溶性虫卵抗原(SEA)分子を解析した。慢制日本住血吸虫症患者末梢リンパ球よりSEAの2次刺激によってSEAに特異的に増殖するCD3^+CD4^+CD8^-のT細胞株を得た。このT細胞株由来のクロ-ンはSEAの刺激に対してインタ-ロイキン2(ILー2)およびγインタ-フェロン(ENFーγ)など遅延型過敏反応を調節するサイトカインを産生し、虫卵肉芽腫形成に関与することが考えられた。T細胞株の認識するSEA分子を同定する方法としてTウェスタンによる検討を行った。まずYoung&LambによるTウェスタンの原法による解析に着手したが、この方法には反応測定の感度と再現性に難点があったため、次にAbouーzeidらの改良Tウェスタンの応用を試みた。ドットブロットでは改良法の場合測定感度は原法の約10倍上昇し、また測定間のバラツキもSD<20%に安定する結果が得られた。 この方法によって住血吸虫感染における宿主T細胞の免疫調節に関与するSEA分子は検索した。慢性患者ではSEAの>20KD分画に対するHLAーDQ制御下の抑制制T細胞の発現のあることを本研究計画で観察したので抗HLAーDQ抗体の添加によって免疫抑制を解除した条件で作製したCD4^+T細胞株を得て改良Tウェスタンを行った。その結果16KD,33KD,48KD,113KDの分子はILー2,INFーγなどの産生反応を促し、宿主T細胞の肉芽腫性応答の標的分子と同定され、そのうち33KDと48KDは抑制性T細胞の標的分子として免疫抑制に関連したSEA分子と考えられた。改良Tウェスタンの際のT細胞応答の指標としては増殖反応よりサイトカイン産生反応の方が感度が高かった。T細胞認識エピト-プは現在なお検索中であるが、SEAの<20KD分画にはSEAの抗イディオタイプ関連のアミノ酸配列の存在が示唆された。
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