ベネゼラ糞線虫は、本来ラットの糞線虫であるがマウスにも感染する。本研究では、ベネゼラ糞線虫-マウス感染モデルが、従来のネズミ糞線虫に比べ、ヒトにおける糞線虫症の研究にとって優れた感染モデルであることを明らかにした。即ち、ベネゼラ糞線虫はネズミ糞線虫に比べてマウスに対して高い感染性を示すこと、感染後の体内移行経路がヒトの糞線虫のそれに類似することなどが利点としてあげられる。しかしながら、マウスでの感染成立は一過性であり、消化管内の成虫はやがて排除される。その後、このマウスには再感染に対する強い抵抗性が誘導される。胸腺を欠損するヌードマウスでは、このような成虫の排虫現象も再感染に対する防御も認められず、これらの現象はいずれもTリンパ球に依存性の免疫学的イベントであることが明らかとなった。これらの感染防御能は有毛+/+マウスの脾細胞によってヌードマウスに移入することができたが、感染血清による防御免疫の移入はできなかった。防御反応におけるインターロイキン5の役割を検討するために、抗一IL5モノクローン抗体を投与したマウスにベネゼラ糞線虫を感染させたところ、成虫の消化管からの排除反応には影響がみられらなかったが、再感染幼虫に対する防御効果はこのモノクローン抗体処理によって著明に減弱した。これらのことから、成虫の排虫現象と体内移行期の幼虫に対する殺滅作用は、各々異なる免疫メカニズムによって担われており、前者はIL-5非依存性であるが、後者はIL-5依存性であると判断された。
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