トキソプラズマ(Tp)増殖型虫体の主要膜抗原である分子量3万の蛋白(P30)は、色素試験(DT)を担う抗原として、また感染防御抗原として重要であると考えられている。そこで、このP30を遺伝子工学を用いて分離し応用することを目的として、まずP30遺伝子のプラスミドベクタ-へ導入を行った。1.P30遺伝子を導入したベクタ-の構築:近年クロ-ニングされたP30遺伝子中の蛋白コ-ド領域をpolymerase chain reaction(PCR)法により増幅精製した。即ち、TpRH株から抽出したDNAをテンプレ-トとして用い、プライマ-はDNA合成機で合成した。一方、プラスミドベクタ-としては、融合蛋白としての発現よりもnative蛋白としての発現が望ましいことから、市販の二種類のベクタ-、pTV118N(タカラ)及びpKK233-2(Pharmacia)を用いた。前者はlac、後者はtacプロモ-タ-を有し、いずれも、そのNcoIサイトに外来遺伝子を導入しうるようになっている。このNcoIサイトに連結するために、P30遺伝子末端をAflIIIで切断し、粘着末端としてT4DNAリガ-ゼにより連結した。トランスフォ-マントの選択は、pTVベクタ-に関しては、コロニ-の色により、白色コロニ-を選び、P30遺伝子の向きは、調製したプラスミドDNAの制限酵素(PstI及びSacI)切断分析により調べ、トランスフォ-マントが得られた。pKKベクタ-の場合は、コロニ-ハイブリダイゼ-ション及びpTVと同様に制限酵素切断分析により、トランスフォ-マントが得られた。これらのトランスフォ-マントによるP30の発現については現在検討中である。2.P30感作ラテックス凝集反応(LA)の検討:P30抗体を用いたアフィニィティ-クロマトグラフィ-により得られた少量のP30をラテックス粒子に感作しLAを試みた。その結果、P30-LAは市販のLAキット(栄研化学)とほぼ同等のDTとの定性的一致率を示すことが明らかになった。
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