遺伝子工学を用いて、トキソプラズマ(Tp)主要膜抗原(P30)の大量離を試みた。まず、PCR法により増幅、精製したP30遺伝子を直接発現用プラスミドベクタ-であるpTV118N及びpKK233ー2により連結後、大腸菌を形質転換しトランスフォ-マントを得た。培養後得られた菌体をSDSー電気泳動(SDSーPAGE)及びイムノブロットにより分析したが、P30のバンドは確認されなかった。そこで次に、融合蛋白発現用ベクタ-への導入を試みた。これには、グルタチオンSートランスフェラ-ゼ(GST)の遺伝子を組みこんだ新しい発現ベクタ-(pGEXー1)を用いた。得られたトランスフォ-マントをSDSーPAGE及びイムノブロットで分析した結果、分子量60kDのバンドが認められ、イムノブロットにより、この蛋白がGST/P30融合蛋白と同定された。また、産生されたGST/P30の大部分は菌体破砕後の沈査に存在した。そこで次に、この沈査からGST/P30融合蛋白の分離を試みた。この沈査をまずTriton Xー100及びEDTA処理後、8M尿素での洗浄を2回行ったところ、その沈査にP30融合蛋白が他の大腸菌由来蛋白をほとんど含まず残存することが明らかになった。次に、Tp感染に対する防御免疫として細胞性免疫、とりわけ、活性化マクロファ-ジの重要性が明らかになっている。そこで、上記の方法により得られたP30融合蛋白のマクロファ-ジ活性化能を検討した。その結果、GSTには全くその活性が認められなかったのに対し、GST/P30に強い活性を示した。このことから、GST/P30の融合蛋白中のP30にマクロファ-ジ活性化能が存在することが明らかになった。今後、P30融合蛋白の免疫によるTp感染に対する防御効果を検討するとともに、P30融合蛋白からのP30の分離を試みる予定である。
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