研究概要 |
Trypanosoma gambiense(Tg)原虫の培養上清中に見出されるIFNα/βーNK活性の誘導因子が蛋白としてはごく微量であり、またその収量が不安定であることが判明したので、今年度は対象を原虫感染マウス血清および原虫のホモジネイト成分中に含まれる低分子活性物質に切り換え、その性状及び免疫系への影響を検討した。 Tg原虫(Wellcome株)3×10^4個をBALB/cマウス(6ー8週令)の復腔内に感染させた後3日目の血清を採取し虫体を除去したものをTg感染血清とする一方、Tg感染血からDEAEセファロ-スにより分離した10^9個の虫体を凍結融解後、ホモジナイザ-にかけその遠沈上清を虫体ホモジネイト成分とした。このTg感染血清及びホモジネイト成分を同系マウスに静脈内投与すると、同マウスの血清中には投与後1ー2日目をピ-クとする高いIFNα/β活性が検出され、脾中にもNK活性が同調して誘導された。感染血清中には感染により生じたINFα/β活性が含まれているので、抗IFNα/β抗体を加えてその活性を完全に中和したが、同血清のIFNα/β活性ーNK活性の誘導能に影響はなかった。また感染血清では10^8倍まで高度に希釈してもその活性を認めたが、ホモジネイト成分では40倍希釈により有意な活性は検出されなくなった。次に両者を限外瀘過法(モルカットII)によって分画し、各分画について活性を調べたところ感染血清では、その主な活性は分子量5,000以下の分画に認められたが、ホモジネイト成分では分子量5,000〜10,000以上の分画にのみその活性が検出された。以上の結果、感染血清およびホモジネ-ト成分には、比較的低分子量のIFNα/βーNK活性の誘導因子が存在することが明らかになったが、さらに両者の活性の収量や分子量の比較より原虫感染によりマウス血中にマウス由来の低分子活性物質がde novoに誘導されて来ることが示唆された。なお、感染血清中には有意なILー4活性は検出されなかったが、ILー6活性が誘導された。現在カラム操作によりこの活性因子の分離精製を試みている。
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