研究課題/領域番号 |
01570227
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研究機関 | 国立公衆衛生院 |
研究代表者 |
荒木 國興 国立公衆衛生院, 衛生微生物学部, 室長 (40107800)
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研究分担者 |
野上 貞雄 日本大学, 農獣医学部, 講師 (90172767)
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キーワード | 肺犬系状虫症患者 / 免疫学的診断法 / 第3期幼虫 / Ouchterlony法 / 免疫電気泳動法 / ELISA / イムノブロット法 / ES抗原 |
研究概要 |
本研究では肺癌と誤診されやすい肺犬系状虫症患者の免疫学的診断法を確立することを目標とし、実験的に犬糸状虫を兎に感染させ、免疫血清学的な検討を行った。犬糸状虫の第3期幼虫(L3)と約4ケ月の幼若虫を感染させた兎血清を用いてOuchterlony法で検査した結果、両血清とも犬糸状虫抗原に対して沈降線が認められたが、幼若虫感染血清の方がL3感染血清より明瞭であり、この血清を犬回虫あるいは豚回虫抗原で吸収すると、吸収後には犬糸状虫以外の線虫類の抗原に対する沈降線が消失し、本法が鑑別診断法として優れていることが示された。免疫電気泳動法では、特異沈降帯による診断のように特定の研究者しか理解できないような曖昧な判定法を用いなくても診断できるようにした。犬糸状虫のL3感染兎3匹と幼若虫感染兎11匹の血清を用いてELISA抗体価を比較した結果、それぞれの兎血清でも最も高い抗体価は1:800〜1:12800であり、虫令の違いや感染虫体数と抗体価の関連性は認められず、抗体価の高低は個々の兎の免疫応答によることが推測された。ELISAで抗体の持続期間について検討した結果、3例のL3感染血清では感染後20週で1:200〜1:800であり、4例の幼若虫感染血清では感染後44週でも1:200〜1:400の陽性であり、抗体がかなりの期間持続することが判明した。次にBrugia pahangi、犬回虫、アニサキス、広東住血液線虫、施毛虫、犬鉤虫、肝蛭、大平肺吸虫およびマンソン裂頭条虫のプレロセルコイドを感染させた兎血清に対する犬糸状虫のPBS抗原と排泄代謝産物(ES抗原)による反応性を比較した結果、ES抗原では交叉反応が少なく他の線虫感染症との鑑別が容易であり、犬糸状虫症患者の血清学的診断には犬糸状虫のES抗原を用いたELISAが有効であることが明かとなった。ES抗原を用いたイムノブロット法では犬糸状虫に特異性が高いと思われるバンドは20kD以下であったが、今後さらに検討することが必要と思われた。
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