研究概要 |
平成元年度研究実施計画に従って、以下のように順調な研究成果を得ることができた。 1.黄色ブドウ球菌のα毒素とロイコシジンは、Wood46株及びV8株を用いて、加藤と野田らの方法によって精製し、結晶化することができたので、これを実験に供した。 2.精製したα毒素とウサギ赤血球膜を〔^<32>P〕-NAD存在下で保温したところ、赤血球膜の分子量95,000、52,000、41,000、37,000、28,000、そして10,000の膜蛋白質がADPリボシル化されたことから、α毒素がADPリボシルトランスフェラ-ゼ活性をもっていることを明らかにできた。又、GTP存在下では、上記の膜蛋白質のうち、41,000と37,000の蛋白質が特に強くADPリボシル化されることから、これらの2つの蛋白質はGTP結合蛋白質であることが示唆された。 3.ブドウ球菌ロイコシジンはSとFという2つの蛋白質成分からなっているが、S成分とF成分は、どちらもADPリボシルトランスフェラ-ゼ活性をもっていることを明らかにできた。S成分はウサギ多核白血球の分子量37,000の膜蛋白質を、F成分は分子量41,000の膜蛋白質をADPリボシル化した。 4.ブドウ球菌ロイコシジンのS成分は白血球膜のホスホリパ-ゼA_2を活性化すること、一方、F成分はホスファチジルイノシト-ル代謝系のホスホリパ-ゼCを活性化すること、そしてα毒素は、この2つの酵素活性を一分子でもっていることから、分子量37,000の膜蛋白質と41,000の膜蛋白質は、それぞれホスホリパ-ゼA_2とホスホリパ-ゼCの活性を制御している可能性が示唆されたので、現在、これらの点を研究中である。
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