研究概要 |
平成2年度研究実施計画に従って、以下のように順調な研究成果を得ることができた。 1.実験に用いた黄色ブドウ球菌のα毒素とロイコシジンは、Wood46株及びV8株を用いて、加藤と野田らの方法によって精製し、結晶化したものである。 2.精製α毒素とウサギ赤血球膜とを〔γー^<32>P〕ATP存在下で保温することによって、赤血球膜蛋白質のBand4.1が特異的にリン酸化されることがわかった。このBand4.1のリン酸化は、プロテインキナ-ゼCに特異的な阻害剤であるstaurosporineを添加することによって抑制された。以上から、α毒素は、赤血球膜のプロテインキナ-ゼCを活性化させることが示唆された.さらに、Staurosporineで処置した赤血球ではα毒素による溶血も抑制された。以上から、α毒素によるBand4.1のリン酸化は、溶血機構において重要な役割を担うものと考察された。 3.精製ロイコシジンがPI代謝系のホスホリパ-ゼCを活性化させることを昨年度明らかにしたが、今年度はさらに、ロイコシジンを構成するFとS成分のどちらがその役割を担っているのかを詳細に検討した。その結果,PI代謝系のホスホリパ-ゼCとPIPキナ-ゼを活性化させるのはF成分で、S成分ではないことを明らかにすることができた。また、興味深かったのは、PIキナ-ゼの活性化は、F成分単独,あるいはS成分単独ではみられず、両成分がともに存在したときにみられたことである。以上から、PI代謝系の亢進にも、SとF成分が協同作用をしていることがわかり、ウサギ多核白血球を殺す際にSとF成分の協同作用があるという以前に我々が報告したデ-タを,さらにPI代謝というレベルでも確認することができた。
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