研究概要 |
全世界で今なお毎年500万人の乳幼児が下痢で死亡している。コレラ菌,毒素原性大腸菌はその主要原因菌である。そこで下痢毒素(CT,LT)の下痢発症機構の解析、ワクチン開発に寄与する目的で本研究を企画した。その結果、以下の様な実験結果を得る事が出来た。 1)疫学的にニワトリの毒素原性大腸菌を世界で初めて分離し、産生されているLTに多様性のあることを明らかにした。 2)人及び豚の毒素原性大腸菌の産生するLTにも多様性のあることを明らかにした。 3)LTの構造と機能に関して、Aサブユニット(A)のアデニレ-トサィクラ-ゼの活性化に関与する部位を変異株を用いて明らかにした。すなわちN末端より112番目のグルタミン酸がリジンに変化することにより、LTの生物活性は0.006%以下に低下していた。この変異LT毒素はLTの腸管免疫上どのエピト-プが下痢毒性の予防に効果があるか解析可能にするものであり、将来LT及びCTのトキソイドワクチンの開発に寄与すると思われる。またBサブユニットに関しては、オリゴマ-形成に関与する部位を変異株を用いて明らかにした。すなわちN末端より64番目のアラニンがバリンに変化することによりBサブユニットのオリゴマ-形成能が低下していた。この変異BサブユニットのLTはより優れた抗原物質及びワクチン物質のキャリヤ-の作製を可能にするものと考えられる。 4)LTの活性発現においては、CT、LTの持つアジュバント作用に両毒素の持つADPーリボシ-ルートランフフェラ-ゼの活性が関与することを明らかにした。
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