研究概要 |
エルト-ルコレラ菌とVibrio vulnificusの産生する易熱性溶血毒に連続して8個のアミノ酸配列が共通しているドメインが存在している.このドメインをコ-ドしている塩基配列で,昨年度までの研究でhlyAの6個のアミノ酸を置換したが,本年度さらに4個の変異遺伝子をsiteーspecific mutagenesis法で作製することができた.内訳は(1)各アミノ酸の電荷の極性を逆にする置換,3個,(2)親疎水性を逆転させる置換5個,(3)コドン中の第3番目の塩基がpointーmutationによってアミノ酸置換を起こす場合,そのアミノ酸に置換したもの2個の合計10個である. 各変異クロ-ンを発現ベクタ-にサブクロ-ン化し,大腸菌内でOVERーPRODUCTIONをおこなった.菌体内から変異溶血毒を得,カラムクロマトグラフィ-によって変異溶血毒を部分精製し,ELISAによって抗原量を測定した.その結果から抗原量を一定にして,トリプシンで処理し活性化をおこなった.ウェスタンブロットの結果から各変異溶血毒もnativeな溶血毒と同様にトリプシンによって79kDa protoxinから65kDa mature toxinにプロセッシングを受けることが判明した.このことは変異がプロセッシングには影響しないことを示している.プロセッシングされたサンプルの抗原量を一定にして羊赤血球に対する活性を測定した.その結果,いずれの変異溶血毒も十分の一以下に比活性が低下していた.以上の結果はこのドメインが活性発現に重要な役割を果たしていることを示唆している.特に,VAL230をGLUに置換した場合活性はほとんど見出されなかったことから,この部位での疎水性が活性に関与しているものと考えられる.
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