研究概要 |
(1)創傷感染症の病原因子の一つであるV.vulnificusのcytolysinの構造遺伝子の全アミノ酸配列を塩基配列から決定した.このアミノ酸配列中にV.choleraeのエルト-ルcytolysinのアミノ酸配列と共通な8個のアミノ酸からなるドメインが保存されている事を見出した。 (2)エルト-ルの構造遺伝子を大腸菌んで発現させ79kDa前駆体を大量に精製した。前駆体をコレラ菌の可溶性血球凝集素,および,トリプシンで処理することによって65kDaの成熟溶血毒となり活性が20倍以上上昇し活性化されることを見出した.このプロセッシングは前駆体のN末端ペプチドが切断されるためであることが判明した. (3)共通アミノ酸のうち一個を変異させるような合成オリゴヌクレオチドを作成した.変異は,(A)タンパクの各アミノ酸の電価,疎親水性に大きく変化を与えるものと(B)反対に電価疎親水性の変化を最小限に抑えるもの(C)コドン中の第3番目の塩基の変異に伴ってアミノ酸置換を起こすもの,の3点を組み合わせて合成オリゴヌクレオチドを合成した. (4).Siteーdirected mutagenesisで変異遺伝子を作製し,目的部位の塩基配列に変異が起こっている事を塩基配列の決定にによって確認し合計10個の変異クロ-ンを得た. 各変異クロ-ンを大腸菌内でOVERーPRODUCTIONさせ,菌体内から変異溶血毒を得,カラムクロマトグラフィによって変異溶血毒を部分精製し,ELISAによって抗原量を測定した.トリプシン処理で活性化をおこなったのち羊赤血球に対する活性を測定した.その結果,いずれの変異溶血毒も1/10ー1/100に比活性が低下していた.以上の結果はこのドメインが活性発現に重要な役割を果たしていることを示唆している.
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