研究概要 |
1.α毒素遺伝子の全塩基配列を決定し論文発表した。1194塩基,分子量45473,分泌シグナル28アミノ酸よりなる蛋白をコ-ドしていることが明らかとなった。コンピュ-タ-解析によりN末端近くに疎水性の高い領域があり活性中心と考えられる。これまでα毒素の産生にはZnの添加を必要とすることからZnのメタルチオネインと考えられている。しかし、Znによる誘導を調べたところ酵素合成の誘導は認められなかった。また塩基配列にもZnーfinger構造が存在しないことから、Znは単に酵素の高次構造の維持に必要であるに過ぎないことが明らかとなった。 2.α毒素遺伝子のクロ-ニングの過程で得られた4.4kb断片と最小単位の1.4kb断片について産生される毒素量を比較したところ、後者の方が約10倍高かった。このことから4.4kb中の毒素遺伝子外の部位に毒素の発現に対し抑制的に働く部位が存在すると考え、この領域をさらに検討したところ遺伝子の上流0.6kbが抑制作用を示すことが明らかとなった。この0.6kbのトランス実験から抑制作用はcis作働性であることが明らかとなった。またDeletionの実験から上流域100base内に重要な領域があることがわかり、この領域の塩基配列を決定した。塩基配列上の特徴は(1)典型的なBent DNAの存在を示す(A・T)n配列が認められること、(2)大腸菌のArginine boxに類似した配列が認められることである。Arginineによりα毒素産生が増加することが報告されており、アルギニン代謝とα毒素の遺伝子発現との関連性が示唆された。 3.α毒素遺伝子の染色体上の数と配列について、入gt10ーlibraryの中から得られたα毒素の30クロ-ンについて制限酵素地図を比較した。全て同一のものであり、この実験からはα毒素遺伝子が多数直列に配列しているという直接の証明は得られなかった。
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