研究概要 |
1.Q熱リケッチアの増殖性の検討:マウスにおける本菌の増殖性はcycloーphosphamide処理により促進され、非処理マウスの約1000倍の増殖がみられた。このことから本菌の分離に際してのcyclophosphamide処理の有用性が確認された。一方、培養細胞における本菌の増殖性は、宿主細胞の種類や由来動物の系統により著しく異なることが示された。 2.血清学的診断用抗原の作成:I相抗原は我々の分離株(TKー1株)を発育鶏卵に接種することにより十分量を得ることができた。II相抗原については、卵黄襄における継代が20代目に達し、診断用II相抗原として使用できるめどがついた。一方、トリクロル酢酸処理をしたI相抗原は抗II相抗体に強い反応性を示し診断用II相抗原としての有用性が示された。 3.検査手技の検討:Q熱の血清学的診断法としては、感度,迅速性,実用性の各点から間接蛍光抗体法が優れているとの結論を得た。しかし、最近注目されている分子量60K〜65Kダルトンの菌種間共通抗原の関与を考慮する場合には、従来法のいずれにも特異性の点で問題があり、この場合はイムノブロッティング法が有用であった。 4.Q熱の血清疫学的研究:北海道から九州におよぶ日本国内の数地域で採取された乳牛、および獣医師と畜産関係者の血清について、Coxiella burneーtiiに対する抗体の有無を調べた。その結果、乳牛329検体中96検体(29.2%)に抗体が検出された。また、ヒトの血清についても9名中2名の血清に抗体が検出された。このことは、我が国においてもC.burnetiiが既に広範に浸淫していることを示す重要な新知見であり、不明熱の診断に際してQ熱の存在を想起することが重要であることを示している。今後とも基礎医学、臨床医学、および獣医学領域の協同による全国レベルでの詳細な基礎的・臨床的研究の継続が必要である。
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