強力かつ多彩な生物活性を有する細菌内毒素(Lps)の作用機序を解明する目的で、マクロファージ(Mф)をLPS刺激した際にリン酸化される蛋白(phosphoproteir・pp)について調べた。(1)刺激後、15ー30分で数種の蛋白がリン酸化された。(2)これらのPPはMф内で特長的に局在していた。即ち、PP65とPP28は細胞質分画中に、PP58、PP43、PP33とpp19は細胞膜分画中に、PP105とPP75は両者に、それぞれ局在していた(PPの後の数字は分子量)。(3)これらのPP中、最も強くリン酸化される細胞質蛋白(PP65)を単一標品にまで分離精製した。精製PP65の部分アミノ酸配列を決定したところ、最近同定されたプラスチンという新種の蛋白と相同性のあることが分った。プラスチンは、ヒト線維芽細胞が癌化する時に出現してくるリン酸化蛋白として同定されたもので、我々のPP65が細胞の分化や増殖と関連することを示唆するものである。(4)pp65をウサゾに免疫して抗体を得た。この抗体を用いて螢光抗体法にてMф内の局在を調べると、細胞質内にほぼ一様に分布していた。(5)抗PP65抗体を用いて、MфをLPS刺激した際に生成するPP65の程度を免疫沈降法により特異的に検出すると、支激後30分以内にPP65の生成量はプラトーに達し、3時間後には減弱した。LPS不応答性C3HlheJマウス由来のMФでは、PP65の生成は認められなかった。(6)抗PP65抗体を用いたWestern Blot法にて、Mфでは、PP65の生成は認められなかった。(6)抗体を用いたWetern Blot法にて、Mф以外の細胞中のpp65及びP65(非リン酸化蛋白)の存在を調べた。Mфの他、脾B細胞、脾T細胞、多核白血球中に認められたが、胸線T細胞や骨髄細胞中には認められず、細胞の分化段階に依存することが示された。C3HIHeJ細胞中にも、P65は認められたが、LPS刺激でPP65は生成しないことから、HeJ細胞の機能欠損はPP65のリン酸化に至る経路に存在することが示唆された。また、LPS刺激で誘導され、P65をリン酸化するプロティンキナーゼはCa^<2+>を必要とせず、PKCとも異なることが示唆された。
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