1.ヒト正常細胞及び毒素耐性突然変異細胞からのEF_2ゲノム遺伝子のクロ-ニング。 (1)遺伝子の移入することにより、毒素感受性の培養細胞に毒素耐性を与えるEF_2遺伝子(以下毒素耐性EF_2遺伝子と呼ぶ)は、コスミドクロ-ニングで目的のクロ-ンを得た(J.Bacteriol.171:1068ー1074(1989))。 (2)正常細胞からのEF_2遺伝子のクロ-ニングは、まず常法に従って正常細胞のDNAバンクをEMBLベクタ-で作成し、次に毒素耐性EF_2遺伝子の断片をプロ-ブに用いて、プラ-クハイブリゼ-ション法(plaque hybridization)でこのバンクを選択し、野生型EF_2遺伝子を有するクロ-ンを得た。現在このクロ-ンを解析し、毒素耐性変異のEF_2遺伝子上でのマッピングと毒素耐性変異に関与するタンパク質ドメインの決定を進めている。 2.マウス正常細胞からのEF_2ゲノム遺伝子のクロ-ニングと試験管内突然変異法による毒素耐性変異遺伝子の作成。 (1)マウスL細胞のゲノムDNAに対するコスミドバンクを作成し、チャイニ-ズハムスタ-EF_2遺伝子断片をプロ-ブに用いたコロニ-ハイブリダイゼ-シン法(colony hybridization)で、マウスのEF_2ゲノム遺伝子とEF_2関連遺伝子を得た(Gene85:427ー433(1989))。 マウスEF_2遺伝子の全塩基配列を決定し、現在試験管内突然変異法による毒素耐性変異遺伝子の作成を進めている。 (3)マウスEF_2関連遺伝子の解析により、この遺伝子は、EF_2のcDNAnに由来する偽遺伝子で、マウスゲノムに組込まれた後に、周辺の配列を含む数百kbの領域が数十倍増幅したものであることが判明した(Genomics 6:80ー88(1990))。これまでに検討した全ての系統のマウスでこのような大きな増幅が認められたので、その生物学的意義が何であるか(あるいはマウスの進化の過程で何であったか)は大変興味深い問題である。
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