麻疹ウィルス感染細胞の培養温度上昇によりM蛋白合成が選択的かつ即座にペプチド鎖伸長のレベルで停止する現象を解析する目的で遺伝子導入実験を行ない、現在、以下のような結果が得られている。 ブル-スクリプトベクタ-でin vitro RNA合成・翻訳実験可能な麻疹ウィルス(CAM株)各遺伝子の完全長cDNAを種々の発現ベクタ-に組み込み、リン酸カルシウム法で培養細胞内に導入した。PおよびMcDNAをヒトサイトメガロウィルス(HCMV)の前初期遺伝子を含むpHD1013に、P、HおよびMcDNAをマウス乳癌ウィルス(MMTV)とラウス肉腫ウィルス(RSV)のLTRをプロモ-タ-として含むpMAM-neoに、また、HおよびMcDNAをSV40プロモ-タ-を含むpSRαに組み込み、トランスフェクション後、麻疹ウィルス高度免疫血清あるいは単クロ-ン抗体を用いた蛍光抗体法にてそれらの発現の有無を検討したが、すべて陰性であった。現在、この原因を検索するとともに、HおよびMcDNAを新たな発現ベクタ-pSG5に組み込み、発現系の確立を急いでいる。また、麻疹ウィルス他株(Edmonston株)の各種遺伝子の完全長CDNAも入手し、これらについても同様に検討を加える予定である。 培養細胞由来無細胞蛋白合成系はHackettらの方法に従い調整し、検討を加えているが、未だウィルス特異蛋白の合成を認めていない。細胞由来のRNaseの混入に原因があると考えられ、この点に関する検討が必要と思われる。また、他の調整方法を用いることも考慮している。
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