麻疹ウイルス感染細胞の培養温度上昇によりM蛋白合成が選択的かつ即座にペプチド鎖伸長のレベルで停止する現象を解析する目的で遺伝子導入実検を行ない、以下のような結果が得られた。 ブル-スクリプトベクタ-でin vitro RNA合成・翻訳実験可能な麻疹ウイルス各遺伝子の完全長cDNAを4種類の動物細胞発現ベクタ-に組み込み、リン酸カルシウム法にて培養細胞内に導入し、それらの発現を検討した。その結果、Edmonston株のH蛋白およびM蛋白cDNAをSV40初期プロモ-タ-を含む動物細胞発現ベクタ-pSG5のクロ-ニングサイトに挿入したpSG5EHおよびpSG5EMと、同様にしてCAM株のM蛋白cDNAを挿入したpSG5CMが発現可能であった。各プラスミドDNAがトランスフェクションされたCOSー1細胞を35℃および39℃にて^<35>Sーメチオニンで6あるいは18時間ラべルし、抗Hおよび抗Mモノクロ-ナル抗体を用いた免疫沈降とSDSーPAGE法にてウイルス蛋白合成を調ベた。その結果、H蛋白は両温度で同様に合成されていたが、M蛋白はウイルス感染細胞におけると同じく、35℃で検出され、39℃ではまったく検出されなかった。また、HおよびM特異的なriboprobeを用いたノ-ザンブロット解析によりトランスフェクションされた細胞内のHおよびmRNAは35℃と39℃において同様に存在していた。これらのことから単独のM遺伝子導入細胞においてもウイルス感染細胞におけると同様、高温下にて翻訳レベルでのM蛋白合成阻害が甫現されることが明らかとなった。今後、欠失変異M遺伝子等を用い、さらにこの阻害現象の解析を進める予定である。一方、Hackettらの方法に従い、培養細胞由来無細胞蛋白合成系の確立をこころみたが、ウイルス特異蛋白の合成は検出できなかった。今後さらに検計を加えたい。
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