研究概要 |
1.新たな血清型に属するヒトロタウイルス(L26,L27株)の解析: すでにVP7遺伝子の解析は終了したので、本年度はVP4遺伝子の塩基配列を決定した。L26,L27株のVP4遺伝子は、他のヒトロタウイルスと同様、2,359塩基からなり、775個のアミノ酸をコ-ドしているが、血清型2に属するヒトロタウイルス(DSー1,S2株)のVP4アミノ酸配列と高いホモロジ-(95%)を示した。L26株とL27株のVP4の間には3個のアミノ酸の違いが見いだされたが、その1つはVP4上の主要な抗原部位に関連するアミノ酸No.392にあり、L26ではE,L27ではKであった。抗VP4中和単クロ-ン抗体S2ー2F2に対する抵抗性変異株が同位置にKからEへの置換を起こしており、L26株がS2ー2F2抗体との反応性を失っている結果を反映している。さらに、L26株のmRNAを^<32>Pで標識したRNAプロ-ブを用いたRNAーRNAハイブリダイゼ-ションで、L26株と血清型2のヒトロタウイルスとの関連性が示されたが、動物ロタウイルスとの関連性は低いと思われる。 2.血清型6に属さないウシロタウイルスの解析: タイのウシ下痢便から、23列の血清型6に属さない株を分離した。そのうち3株を用いて交又中和反応およびVP7遺伝子の全塩基配列を決定し、1株は血清型8、残りの株は血清型8、残りの株は血清型10と型別された。ウシロタウイルスの大部分は6型と報告されているので、この高頻度の血清型10の検出の疫学的意味は今後の追求すべき課題である。血清型8(A5株)と血清型10(61A株)由来の標識RNAと代表的なヒトおよび動物ロタウイルスRNAとのハイブリダイゼ-ションの結果、これらのウシロタウィルスには血清型2と8のヒトロタウイルスと遺伝的な関連があることが示された。VP4遺伝子の解析も現在進行中である。
|