1.インフルエンザウイルス遺伝子を動物細胞で発現させる為に、ホルモン(dex)で転写を制御できるプロモ-タ-を有するマウス乳癌ウィルス(MMTV)のLTRの下流にウィルスRNA合成酵素(PB2、PB1、PA)及び核蛋白質(NP)遺伝子の各cDNAをつなぎ、マウスC127細胞内でエピゾ-ムとして自律増殖するウシパピロ-マウイルス(BPV)DNAに挿入した組換えDNA、pBMSA-PB2、pBMSA-PB1、pBMSA-PA、及び、pBMSA-NPを作製した。 2.これら4種の組換えDNAをneomycin耐性遺伝子の発現ユニットを有するプラスミドと一緒にCa-POX_4共沈法でマウスC127細胞に導入し、得られたneo耐性細胞株の中からdex無添加の場合にはウィルスmRNAを殆ど産生しないが、dex添加により多量のウィルスmRNAを誘導し得る細胞株をドットブロット法により二十数株得た。これらの細胞株のうち、導入した4種のウィルス遺伝子のうち少なくとも3種の遺伝子をdex投与により誘導できる細胞株をノ-ザ-ンブロット法で数株選択した。 3.得られた細胞株を用いて、非許容生育温度でそれぞれの遺伝子の温度感受性変異(ts)株の増殖を相補できるかどうかを調べたところ、クロ-ン7株ではPB2、PB1の2種のts株を100倍以上、PA、NPのts株を10倍程度相補した。この結果は導入したウィルス遺伝子のうち、PB2、PB1遺伝子は十分発現しているが、PA、NP遺伝子の発現は十分でないことを示している。現在、更に導入した4種全てのウィルス遺伝子を多量に発現し得る細胞株の樹立を試みている。
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