1.マウスサイトメガロウィルス(MCMV)の胎生後期マウス胎仔脳室内注入による出生時の脳障害 ICRマウスを交配し、妊娠23日目にMuneokaらの方法に従って子宮壁を開き、MCMVを卵黄膜嚢に包まれた胎仔脳室内に注入した。腹腔を閉じて、妊娠満期である18日目まで飼育し、妊娠18日目に胎仔を取り出し、肉眼的観察、およびBouin固定後、組織病理学的および免疫組織化学的解析を行った。MCMVを注入した胎仔で、妊娠18日まで生き延びたもの26匹中、肉眼的に大脳の腫脹したもの4例、大脳半球の変形したもの3例であった。 2.MCMVの胎生期脳室内注入マウスの生後の解析 マウスでは生後1週で大脳皮質と白質が明確化し、皮質の層状構造が進む。MCMVの脳室内注入胎仔を生後母親マウスに哺乳させることは非常に困難であった。胎生15日目に子宮壁を通して、IX10^3PFUのウィルス価を注入することによって、生後まで生育させることが可能になった。 3.免疫組織化学二重染色によるMCMV脳室内注入マウスの生後の脳の解析 生後10日目で、ウィルス抗原陽性細胞は主として大脳皮質および海馬に層状に配列する傾向を認めた。神経組織特異抗原である神経細胞特異エノラ-ゼ(NSE)に対するウサギ抗体と、MCMV前初期抗原に対するモノクロ-ナル抗体(Dー5)による二重染色を行った。大脳皮質および海馬においてウィルス抗原陽性細胞と、NSE抗原が同時に染色される細胞群が認められ、ある種の神経細胞が、MCMVの感染に感受生があることを示した。 4.In situ hybridization による解析 MCMVをSallで切断した任意のフラグメントを、幾つかクロ-ニングし、マウスDNAとハイブリダイズしないものをビオチル化dATPでラベルしてプロ-ブとした。陽性反応は核内が顆粒状に染まり、ウィルス抗原陽性細胞の約10分の1ほどがウィルスゲノム陽性で、両者は一した局在を示した。
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