アデノウィルス12型EIAによる組織適合性抗原クラスI遺伝子の転写抑制に関与するシス・エレメントをDNase Iフットプリント、ゲルシフト法で決定し、プロモ-タ-上流、2kbのtandemに並んだCAAリピ-トに同定した。このエレメントをクラスI cDNA遺伝子上流に挿入すると、顕著に、Hー2クラスI抗原の発現が、EIA依存的に抑制される。このエレメントに結合する蛋白質は、アデノウィルス12型感染細胞でその発現が著しく高く、しかもEIAとin vitroで、会合する活性を有する事を、「免疫沈降PCR法」を使用して明かにした。更にこのCAAリピ-トに結合する遺伝子を、サウスウエスタン法を使用して単離同定し、その塩基配列を決定した。この遺伝子は、塩基性アミノ酸に富むドメインと、酸性アミノ酸に富むドメイン、更に、High Mobility Group(HMG)ドメインに分割され、single stand DNA鎖、double stand DNA鎖に、結合親和性を有する。ドメイン解析より、塩基性ドメインに変異を導入すると、DNA結合活性は消失する。現在この遺伝子を発現ベクタ-に組み込み、EIA依存的な抑制活性、分化、未分化に伴う発現様式を解析している。その他、Basalな転写制御に関与する正と負のエレメントを、従来のエンハンサ-コア領域とは異なる部位に同定した。正の領域は、プロモ-タ-上流ー370よりー292の内に存在し、Heat Shock ConcensusとPurine Boxの配列が連続して存在している。これらの配列には、三種の異なる蛋白質が結合する。負の領域は、(1)ー294よりー213、(2)ー560よりー502の配列である。これらの領域には共通の蛋白質が結合している。その他、正のエレメントには、癌抑制遺伝子産物、Rbが結合している事が、in vitroで証明された。今後、クラスI抗原の発現調節と発癌、臓器移植との相互関係に新しいロ-ジックを導入できる期待がかかっている。
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