研究概要 |
前年度は、チアミン二燐酸(TDP)を燐酸化してチアミン三燐酸(TTP)を生成する酵素:TDP kinaseの単離精製をTDPーbinding proteinをmarkerとして行い、Protein I IIとIIIを得た。しかし、これらのkinase活性を確める実験は不成功であった。故に、今年度はTDP kinaseの性質の検討を深め、その後にTDP kinase活性発現状態の再現を目指した。TDPからTTPの生成量をTDP kinase活性の尺度とし、実験系へいくつかの添加物を加えて活性発現への影響を検討した。これまで、kinase活性発現は採血後3日以内の一回目の凍結ー融解(FーT)時及びFーTの操作なく、金属イオン(Fe^<2+>,Fe^<3+>,Pb^<2+>,Cd^<2+>:10mM)の添加時に認められた。従って、無添加血液のFーT時におけるTTPの生成量を活性値100%として、添加物:金属キレ-ト剤(EDTA)、SH阻害剤(HgCl_2,HgClーφーSO_3Na)の阻害効果を調べた。20mMのEDTA,10mMのHgCl_2,8mMのHgClーφーSO_3Naの各々で100%の阻害効果を認めた。これらの結果、TDP kinaseが金属イオンをcofactorとするSH酵素であることを強く示唆している。他方、whole blood(W)から分離したplasma(P)及びerythrocytes(E)についてTDP kinase活性を検討した。その結果、E中に追求するTDP kinaseは存在するが、100%の活性を得るにはPに存在する補酵素の関与が必要である結果を得た。即ち、FーT時の補酵素(cofactor1)はEとPへの分離操作及びPの10%TCAによる除蛋白操作では失活しないが、Pの一回のFーTで失活し、金属キレ-ト樹脂chelex100による処理でPから除去され得る金属であることが判明した。又金属イオン添加時の補酵素(cofactor2)は、EとPへの分離操作で失活した。このことから、TDP kinase活性が認められた二つの場合(FーT処理時及び金属イオン添加時)に各々異る補酵素がplasma中に存在し、その活性発現の機構に違いがあることが明らかとなった。又、これまでの酵素本体(TDPーbinding protein)の分離精製工程に、DEAEイオン交換樹脂カラムの段階を加えたところ、これまでと異なったTDPーbinding proteinの挙動を認め、その影響を検討中である。
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