研究概要 |
有機溶剤の一種であるスチレンの生体内運命を明らかにするため、ラットを用いてスチレンの呼気からの排泄実験を行なった。実験動物はWistar系雄性ラット(体重約350g)を用いた。スチレン投与はスチレンの0.1,0.175,0.25mlを腹腔内へ投与した。呼気中スチレン濃度はスチレンを投与したラットをガラス製の固定器に入れ、頸のあたりへ空気ボンベから毎分200mlの空気を送り、鼻先から排出した。呼気中のスチレンは排出口より採取し、ガスクロマトグラフィ-で測定した。求めた呼気中の濃度と投与後の時間の関係を最小二乗法により指数関数にあてはめ、その式を用いて、呼気からのスチレンの総排泄量、および排泄後半の半減期および排泄量の算出を試みた。その結果、0.1,0.175,0.25ml投与群のスチレンの呼気中濃度はいずれの投与群においても投与直後が量も高く、その後減少した。その値は投与量に応じた。これらの減衰は指数関数的に減少していると考え、まず、指数関数にあてはめた。この式を用いて全排泄量を計算し、全例におといて投与量のほぼ10-20%が呼気から排泄されていることを認めた。さらに0.25ml群について検討してみると、呼気中濃度が20ppm付近から減少の程度が速くなっていることがわかり、20ppm(投与後約900分)付近で前半と後半について別々の指数関数にあきはめたところ、前半の半減期は後半のそれより約2倍であった。他の群についても20ppm以下のみについてさらに指数関数にあてはめたところ、各群とも0.25ml群と同じ減少速度を示した。スチレン投与後呼気からの後半部分の半減期はほぼ4時間となった。この部分の排泄量の割合は投与量によって異なるが、絶対排泄量を計算したところ0.007-0.008mlとなり、生体内スチレンがある量になったときからの排泄は投与量にかかわらず一定になることを認めた。
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