研究概要 |
本年度は昨年と同様の手法を用いて,ラットの腹腔内に投与とれた一定量のスチレンの呼気からの排泄相式および排泄割合について詳細に得られた実験結果を検討したところ興味ある結果を得た。スチレンの投与量がラット一匹あたり0.1mgのときの投与量に対する総排泄割合は10%であった。ところが0.125,0.2,0.5mgと投与量を増していくと投与量に対し排泄割合は10%より低い値を得た。これらの結果をトキシコカイネティックスの手法を用いて,繁用されている残査法により最終排泄様式を算出した。呼気中スチレン濃度が10ppmになった後は1つの指数関数で示され,直線的に減少し,その半減期は約120分であった。これはラットに0.1mgのスチレンを腹腔内投与したとき,投与直後の呼気中スチレン濃度10ppmに相当する。従ってこの場合はスチレンの投与量に対する呼気からの排泄量は約10%であった。ところが0.125,0.2,0.5mg投与したときのスチレンの呼気からの排泄は,先の残査法では一つの指数関数として表わされなかった。しかしながらこの場合も呼気中スチレン濃度が10ppm付近に低下して以降は一つの指数関数で示されたが,10ppmに低下するまでの減衰を単純な指数関数で示すことは出来なかった。それは,呼気中スチレンの初期濃度は投与量に比例せず,また呼気への排泄速度は遅れ,また呼期からの排泄割合は0.1mgのときより小さくなった。この結果0.1mgより多量投与したときのスチレンの呼気からの排泄様式を指数関数の和で示すことは不可能で,これはミカエリスメンテンの法則に基づくものではないかと考え,ただ今検討中である。さらに一定量のスチレンを投与したときの投与量に対する尿からの排泄割合を尿中代謝物を測定することによって明らかにすることを試みている。
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