研究概要 |
百日咳ワクチン接種後副反応の原因の解明に関するこれまでの研究は、殆どすべて免疫原たるワクチンの改良に向けられ、被接種者の立場からの検討は皆無に等しい。研究課題の初年度の研究として、本年度は非接種者の因子に関する免疫遺伝学的検討を、動物(マウス)感染モデルにより行なった。実験の第一段階として、各種のH-2 haplotypeの異なる近交系マウスに対し、百日咳菌を感染させ、生死、体重変化、末梢白血球数などを指標として感染後1か月間モニタ-した。その結果、使用したBALB/c,DBA/2,C3H,HSFS/N,C57BL/6のマウス間で感受性差が認められた。すなわち、BALB/cマウスが最も感受性が高く、またC57/BL6が最も感受性が低いという結果を得、さらに対ヒタスミン増感性についても系統差を認め、すくなくとも百日咳菌感染に対し、被感染者側の免疫遺伝学的要因の関与が有ることが示唆された。実験の第二段階では、百日咳菌よりも百日咳菌の感染防御抗原であり、百日咳ワクチン接種後副反応に関与すると推定されているFHA(繊維状赤血球凝集素)、PT(百日咳毒素)を百日咳菌培養上清より生化学的に精製し、これらに対する反応性をマウスモデルを使って検討している。さらにまたTransposon Tn5 insertionにより百日咳菌mutantを作製し、このうちPT非産性、またはFHA非産性mutantを用いて、第一段階と同様の感染実験を行ない、これら二つのタンパクの感染免疫ならびに副反応発現への関与の可能性を検討しつつある。なおこれらに対するpolyclonalおよびmonoclonal抗体を作製し、これを用いた実験により、抗PT抗体が副反応発現に働き得るという予備成績を得ている。次年度は、ヒトHLA typeと百日咳ワクチン接種後副反応との関連を、特にPTに注目して検討する。
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