研究概要 |
1981年より世界に先駆けて実用化されたacellularタイプの百日咳ワクチンは、主要感染防御抗原としてフィラメント状赤血球凝集素(FHA)と百日咳毒素(PT)を含み、発熱を中心とする接種後副反応が大幅に減少した。しかしなお残る副反応の原因については、不明な点が多い。本研究では、ワクチン接種後の副反応発生のメカニズムを、マウスのHー2 haplotypeと百日咳菌に対する感染性・免疫反応性との関連性検討することにより、ヒトMHCに着目した免疫遺伝学的立場から検討する為の基礎資料を得た。主要感染防御抗原を含まないB.pertussis mutantを用いた感染防御実験により、菌体成分に対する反応性を調べ、ついでHー2 haplotypeの異なるマウスに対する感染実験により、strainによる感受性差を調べた。その結果、PT(-)mutant,FHA(-)mutantの能動免疫系では良い感染防御能が賦与されないこと、B.pertussis感染に対するマウスの系統差は、感染後のマウスの変化(生死、体重変化、対 histamine増感性、末梢血リンパ球数増多)を指標としてみた所、strainによる差異があることが示唆された。すなわち感受性は BALB/c>DBA/2>HSFS/N>C3H>C57BL/6 のようになり、これをHー2 haplotypeとの関連で見ると、 Hー2^d>Hー2^q>Hー2^k>Hー2^b のようになった。しかし、congenic strainであるB10・D2系マウスに対する感染実験結果(現在追試中)からすると、必ずしも感受性差はマウスHー2 haplotypeときれいな関連を示さないようである。近年骨髄移植が盛んになったが、骨髄バンクはまだ広く機能していない。いずれ、HLAタイプがデ-タバンクとして整ってきた時に、本研究が予防接種副反応防止の面から重要な意味を持つようになると思われる。今後、更に接種後の副反応発生時の実際のデ-タとの関連を、臨床疫学的につめていく必要があろう。
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