尿中有機溶剤代謝産物とクレアチニン同時測定クロマトグラフ法、及び尿の採集・保存法

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570313
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 緒方 正名 岡山大学, 医学部, 教授 (70032844)
• 研究分担者: 田口 豊郁 岡山大学, 医学部, 助手 (30197248) ; 松田 昭 岡山大学, 医学部, 助手 (60173837) ; 吉良 尚平 岡山大学, 医学部, 講師 (50033212) ; 目黒 忠道 岡山大学, 医学部, 助教授 (70093713)
• キーワード: 生物学的モニタリング / 尿中代謝産物 / クレアチニン補正 / 比重補正 / 有機溶剤健康診断 / 高速液体クロマトグラフィ- / イオン対クロマトフラフィ- / ろ紙保存法

研究概要

1.測定法の開発;移動相として、20mMリン酸ーカリウム(3mM1ーデカンスルホン酸ナトリウム含有):アセトニトリル(85:15)混液を用いる逆相イオン対高速液体クロマトグラフ法を考案した。本法によって尿中クレアチニンと、馬尿酸、メチル馬尿酸、マンデル酸、フェノ-ルの同時測定が可能となった。
2.採集時期;トルエン暴露の際の尿中馬尿酸濃度の生物学的半減期及び、キシレン暴露時の尿中メチル馬尿酸濃度の生物学的半減期を用いて作製した時間と尿中濃度の対数値の関係を示す直線を求めた。この排泄直線を用いて、一定範囲の時間経過内の時期で基準以外の時期に採集した尿の濃度を、作業直後尿の濃度に補正することができた。一方、暴露終了前の排尿時間が、採集尿の濃度に影響を及ぼすことが明らかになり、作業終了時の尿を採集する場合に、一定時間尿(2時間尿)を採尿する必要が認められた。
3.尿中代謝産物の保存法と代謝産物濃度の補正法;
(1)試料尿を吸収後の濾紙を乾燥させて保存する方法を考案した。有機溶剤の尿中代謝物として馬尿酸、メチル馬尿酸、マンデル酸を選び、これを添加した尿を用いて、20℃の室温で約1週間保存可能であることが認められた。
(2)バレ-ボ-ル練習前後の女子大学生尿について、今回開発した高速液体クロマトグラフ法により馬尿酸濃度実測値を求め、クレアチニン補正を行い、比重補正濃度及び実測値と比較した。その結果、運動前後の馬尿酸濃度の差異はクレアチニン補正濃度、比重補正濃度、実測値の順に少ないことが認められた。

研究成果

• [文献書誌] Masana Ogata,Tomoko Iwamoto and Toshio Kawai: "Enzymatic Assay of Urinary Formic Acid as an Index of Methanol Exposure." Indusutrial Health. 27. 125-129 (1989)
• [文献書誌] Masana Ogata and Tomoko Iwamoto: "Enzymatic assay of formic acid and gas chromatography of methanol for urinary biological monitoring of exposure to methanol" Int Arch Occup Environ Health. 62. (1990)
• [文献書誌] Masana Ogata,Toyohiro Taguchi,Naomasa Hirota,Yoshihiro Shimada and Seitaro Naoe: "Data base for biological monitoring of aromatic solvents." Biological Monitoring of Exposure to Industrial Chemicals(ACGIH)affiliated with Applied industrial hygiene. (1990)
• [文献書誌] 緒方正名,田口豊郁,三島四郎,松田昭,目黒忠道,河合俊夫: "有機溶剤職場における生物学的モニタリングの適用" 産業医学ジャ-ナル. 13. 36-45 (1990)
• [文献書誌] 田口豊郁: "有機溶剤の生物学的モニタリングのための尿試料の保存と尿中濃度の補正について" 岡山医学会雑誌. 102. 113-127 (1990)
• [文献書誌] 緒方正名(労働省監修): "有機溶剤健康診断のすべて" 全国労働衛生団体連合会, (1990)