研究概要 |
現在、地下水汚染等で社会的問題となっているトリハロメタン及びトリクロロエチレン、I,I,I-トリクロロエタン、テトラクロロエチレン等の有機塩素系溶剤の生体内毒性に関しては不明な点が多い。そこで、私達はこれらの溶剤の中でも特に一般的なトリクロロエチレンに的をしぼってその生体内動態について麻酔犬を使用して実験的に検討し以下の結論を得た。 1.トリクロロエチレン及びこの代謝産物である抱水クロラ-ル、遊離型トリクロロエタノ-ル、トリクロロ酢酸の肝臓以外の臓器での代謝割合を観察すると、体内に取り込まれたトリクロロエチレンの約25%が肝臓以外の臓器で代謝されることがわかった。また、代謝産物である抱水クロラ-ル、遊離型トリクロロエタノ-ル、トリクロロ酢酸の代謝では、抱水クロラ-ルから遊離型トリクロロエタノ-ルへの代謝は対照群と同等であったが、抱水クロラ-ルからトリクロロ酢酸へは、対照群の10〜20%、遊離型トリクロロエタノ-ルからトリクロロ酢酸へはごくわずかしか代謝されなかった。 2.トリクロロエチレン及びこの代謝産物である抱水クロラ-ル、遊離型トリクロロエタノ-ル、トリクロロ酢酸及び抱合型トリクロロエタノ-ルの胆のうからの吸収割合を観察すると、投与後2時間で、抱水クロラ-ル、遊離型トリクロロエタノ-ル、トリクロロエチレンは投与量の65〜70%、抱合型トリクロロエタノ-ル、トリクロロ酢酸は40〜50%が吸収された。その他、胆のうから吸収された抱合型トリクロロエタノ-ルは門脈から肝臓に送られた場合、直接静脈系に移行し、腎臓から排泄されることが解った。
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