研究概要 |
現在、地下水及び河川汚染で社会的問題となっているトリハロメタン(クロロホルム,ジクロロブロモメタン,クロロジブロモメタン,ブロモホルム等)およびトリクロロエチレン,1,1,1ートリクロロエタンおよびテトラクロロエチレン等々の有機塩素系溶剤は、脱脂洗浄、樹脂溶解、塗料のシンナ-、リ-ムバ-、冷媒、ドライクリ-ニング等の目的で広範囲に使用されており、その使用量も非常に多い。 他方、これらの物質に関する実験的研究ならびに、疫学的研究の報告は数多い。しかし、これらの物質に関する生体内吸収、排泄、代謝などに関する生体内動態に関しては、解明されていない部分が非常に多い。 そこで、これらの有機溶剤の中で最も普遍的に用いられている、トリクロロエチレンに着眼して、この溶剤の生体内動態及び代謝について麻酔犬を使用し実験的に、かつ詳細に検討し以下の結論を得た。 トリクロロエチレン(TRI)の腸管からの吸収割合を追究するために、麻酔犬を使用した腸管潅流法によりTRIの吸収割合は、潅流開始2時間後で投与量の50〜70%であった。また、この時間内に吸収されたTRIの0.1〜0.4%が代謝産物として、尿及び胆汁中に排泄された。 他方、TRIの代謝産物である抱水クロラ-ル(CH)、遊離型トリクロロエタノ-ル(F・TCE)、トリクロロ酢酸(TCA)投与時では、いずれの場合も40〜60%の吸収割合を示したが、尿及び胆汁への排泄割合は、F・TCE投与群で25〜30%、CH投与群で10〜15%、TCA投与群で、0.1%でありTRIとは異なっていた。また、この腸管潅流法は閉塞性腸管潅流吸収システムとは異なり、多量の潅流液を必要とする欠点がある。
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