カロチンの発がん予防効果に関する疫学調査を行うため、カロチンを大量に含有する海苔を、日常的に大量摂食する海苔養殖従事者を調査対象とした。有明地区26漁業協同組合を総括する福岡県有明海漁業協同組合連合会と頻回の接触を重ねて調査の協力を得るとともに、全国共済水産業協同組合連合会における保険支払い記録の閲覧を行った。 保険支払い記録の閲覧により、昭和54年以降のがん罹患51人、がん死亡30人、総死亡90人を確認した。また発がんの頻度の母集団である共済組合全加入者のリスト(約7000人)を入手した。 組合員全員に対し家族調査を実施、過去5年以内の死亡者を調査した。これら死亡者に関し、地元保健所にて死亡小票を閲覧して確認を行うため、現在総務庁の許可を申請中である。 また所属組合員に対するライフスタイル調査のため、予備調査を繰り返して調査票を完成した。平成3年繁忙期後の4〜5月に26漁協組合の40歳以上全員に本調査票を配布し、回収した。 別途がん死亡と食生活(特にβーカロチン摂取)の関連を調べるため、カラ-写真による質問様式を完成したので、平成3年4月からの漁閑期に、専門の調査員による精密聴き取り調査を行っている。本調査は死亡小票閲覧により確認した死亡者にまで範囲を拡げる予定である。 “のり"の種付け及び収穫は10月〜3月にかけて行われる。従ってこのための準備期間を含めると、調査可能時期に大きな制約を受ける。また普賢岳噴火による有明海汚染や平成3年秋の台風被害により調査が大幅に遅れた。しかしながら総務庁の許可が得られれば本研究の最終調査にとりかかれる予定である。
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