本研究は南米に移住した日系移住民と沖縄県民およびその他県民を対象として、遺伝的、地理的環境要因からみたこれら地域住民の健康の様相を明らかにする目的で、比較血清疫学的観点から検討を行った。 移住者の健康が移住環境すなわち気候、地勢などの自然環境や、移住地の他の民族から受ける文化的環境、経済環境などの様々な社会的環境要因によって影響を受け、その結果、移住者の疾病構造や死亡構造が、わが国におけるそれと比較し、異なった様相を示している。 種々の検討の結果、社会的環境要因として最も大きな影響を与えると考えられる、住民の食生活について国立がんセンタ-研究所疫学部の援助のもとに調査を行い、住民から得られた血液検体のアミノ酸分析を行なった。 血中遊離アミノ酸の血中レベルは、食物摂取成分により大きく影響を受ける。 種々の生体成分の中においてもアミノ酸は特に種類が多用であり、食物の取り込みについての重要な情報を提供する。 以上の観点から本研究において、食物摂取の実態を把握するために、血清疫学の対象生体成分としてアミノ酸を選択した。 対象地域として、1)沖縄県民が移住した、ボリビアのサンタクルス市郊外に存在するオキナワ移住地、2)サンパウロ市の日系人世帯のうち無作為抽出によって選択された地域に居住する全日系人世帯、3)沖縄県石川保健所管内の40ー49歳の男性から無作為抽出した住民、4)岩手県二戸保健所管内(沖縄と同様の方法)、5)秋田県横手保健所管内(沖縄と同様の方法)を選択した。 さらに、本研究を介してアミノ酸において、栄養調査と陰膳法により得られたアミノ酸値と血中遊離アミノ酸値の関係が、十分に解明されていない事がわかった。 以上の問題点を明らかにする目的で基礎的研究を行った。
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