和歌山県で高率にみられる脳血管疾患、心疾患死亡を食生活との関連で解析を進めるために、初年度(平成元年度)に栄養調査を実施し、栄養摂取状況の地域差について検討を加えた。 〔対象と方法〕農林統計に用いる経済地帯区分に準拠して、全県を都市近郊、平地農村、農山村、漁村の4地域に分け、各地域から県内10保健所ごとに3地区、1地区当たり30世帯を目途に対象を選定した。都市近郊251世帯(802人)、平地農村220世帯(890人)、農山村150世帯(489人)、漁村131世帯(403人)が対象となった。栄養調査は国民栄養調査に準じた。〔結果〕1.食品群別摂取状況:都市近郊は小麦類・緑黄色野菜・肉類・加工食品を他の地域より多く摂取する傾向を認め、この地域では主食に対する米類の依存度が低い食形態であること、漬物類の摂取が少ないことが特徴であった。平地農村は砂糖類・菓子類・果実類を多く摂取する傾向が認められた。農山村は米類の摂取が多く、穀類全体の84%を占めていた。この地域ではその他の野菜類・漬物類も多く摂取されていた反面、小麦類・菓子類・油脂類・緑黄色野菜・肉類・卵類・乳類・加工食品の摂取が少なかった。このように農山村では米類が中心で限られた食品を摂取する伝統的な食形態が維持されていた。漁村は緑黄色野菜・魚介類・肉類・卵類・乳類・を比較的多く摂取し、菓子類・漬物類・加工食品の摂取は少なかった。2.栄養素等摂取状況:エネルギ-は平地農村でやや多かったがほとんど地域差は認められなかった。穀類エネルギ-比は農山村が最も多く、また脂肪エネルギ-比および脂肪は農山村が最も少なかった。炭水化物は平地農村、農山村で若干多かった。食塩は平地農村が12.8gと最も多く、次いで農山村11.9g、都市近郊11.3g、漁村9.9gの順であった。摂取構成をみると、農山村では「しょうゆ」、都市近郊および平地農村では「食卓塩」からの摂取が多い傾向がみられた。
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