生化学的指標を用いた大気汚染および喫煙の生体影響に関する疫学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570325
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 春日 斉 東海大学, 医学部・公衆衛生学教室, 教授 (60096211)
• 研究分担者: 松木 秀明 東海大学, 医学部・公衆衛生学教室, 助教授 (90096264)
• キーワード: Desmosine / ELISA法 / 交叉反応性 / ランダム尿 / Desmosine比 / 代表性

研究概要

昨年度作成したELISA法に供するためのDesmosine抗体の交叉反応性のチェックおよびDesmosineを大気汚染或いは喫煙の生体影響の指標として疫学的研究に用いる場合、多数の健常人から24時間蓄尿を採取することは困難であるため、随時尿中Desmosine:Creatinine比(DES ratio)が24時間尿中排泄量を代表しうるか否かについて検討を行なった。方法:Desmosinの交叉反応性試験には市販のアミノ酸19種類、Desmosine、Isodesmosine、Pentasineおよびエラスチン・コラ-ゲンから精製したPyridinolineと2'ーdeoxypridinorineを用いた。ランダム尿中DES ratioと24時間尿中Desmosine排泄量との関連については、通常の健康診断で異常を示さなかった6名の健常男子を対象とし、5〜7日間ランダム尿の採取を行なった。結果および考察:Desmosine抗体と市販のアミノ酸19種類、Pyridinoline、2'ーdeoxypridinorineとは全く交叉反応性を示さなかった。またPentasine、Isodesmosineとは低濃度領域で交叉反応性は示されなかったが、高濃度領域(400ng/ml以上)では交叉反応性が認められた。しかし、この問題はサンプルを希釈することにより解決しうるものと思われる。ランダム尿中DES ratioの24時間代表性について、各々の被検者の24時間尿量、Desmosine排泄量はかなり変動したが、24時間尿中DES ratioは日間変動が少さく、早朝尿中DES ratioとの相関係数は0.93を示した。以上のことから、早朝尿中DES ratioが24時間尿中DES ratioを代表しうること、またCreatinine比を用いることにより、24時間排泄量の変動を小さく表わせること、従来報告されているようにCreatinine比は被検者の体筋肉量の補正が可能であることから、早朝尿中DES ratioが疫学的指標となる可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] T.Watanabe,K.Ishimori,A.J.W.Verplanke,H.Matsuki,H.kasuga: "An EnzymeーLinked Immunosorbent Assay for the Quantitation of Urinary Desmosine" Tokai Journal Experimental and Clinical Medicine. 14. 347-356 (1989)
• [文献書誌] T.Watanabe,H.Matsuki,T.Ogawa,Y.Kawanishi,H.Kasuga: "Polyclonal AntiーDesmosine Antiserum Is Specific to Desmosine Molecure:No Crossーreaction to Pyridinoline" Tokai Journal Experimental and Clinical Medicine. 14. 367-373 (1989)
• [文献書誌] H.Matsuki,K.Misawa,T.Watanabe,H.Kasuga: "The Effects of Smoking and Air Pollution Using Urinary Desmosine" Proceeding of the 5th International Conference on Indoor Air Quality and Climate. 2. 213-218 (19 0)
• [文献書誌] T.Watanabe,H.Matsuki,K.Misawa,H.Kasuga: "EnzymeーLinked Immunosorbent Assay(ELISA)for Urinary Desmosine" Proceedings of the 5th International Conference on Indoor Air Quality and Climate. 2. 219-224 (1990)