研究概要 |
1.目的 大気汚染、受動喫煙の生体影響について、生化学的指標としてElastinの最終産物である尿中Desmosineに着目し、その測定法の確立および疫学的研究の応用について検討してした。 2.方法 (1)Desmosine抗体の作成:日本白色系ウサギを飼育し、免疫用アジュバントをウサギ腹腔内に投与し、Desmosine抗体を得た。(2)交叉反応性試験:得られたDesmosine抗体の特異性を検討するため、市販のアミノ酸19種類およびIsodesmosine,Pentasine,Pyridinoline等と交叉反応試験を行った。(3)ランダム尿中DES比(Desmosine:creatinine比)の24時間尿中DES比代表性の検討:疫学調査にDES比を応用する場合、多数の健常人から24時間蓄尿を採取することは困難であるため、ランダム尿中のDES比が24時間尿中Desmosine排泄量を代表しえるか否かについて、検討した。(4)DES比の疫学調査への応用の可能性を検討するため、神奈川県下の小学校学童およびその父親を対象として、質問票調査と尿中DES比の測定を行なった。 3.結果および考察 DesmosineのELISAによる測定法を確立した。交叉反応試験において作成したDesmosine抗体は市販のアミノ酸、Pentasine、Pyridinoline,とは全く反応しなかったが、Isodesmosineは高濃度領域において40%の交叉反応性が認められた。ランダム尿中DES比と24時間尿中DES比の相関係数は早朝尿ではr=0.78を示し、早朝尿中DES比は24時間尿中DES比を代表し得るものと考えられた。神奈川県下小学校学童の父親198例について、尿中DES比を測定、質問票によって得られた喫煙習慣により、分類して比較すると、1日の喫煙量が増加するにつれて、尿中DES比は増加した。しかし変動係数は各群において75〜90%を示し、各々の群間で有意差は認められなかった。また尿中DES比と1日喫煙本数の相関係数は0.111と低かった。また学童における受動喫煙影響について、検討した結果、平均値は受動喫煙群が高かったが、統計学的有意差は認められなかった。今後、個体差によるばらつき、或いはDesmosine排泄に関与する因子について更に検討を要すると思われる。
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