本年度は、腸管内におけるエタノ-ルの分解および産生に及ぼす腸内細菌の影響について、家兎を用いて細菌学的にin vitroで検討を行った。 1.家兎盲腸内容からE.coli種5株およびEnteroーbactor属1株の計6種の菌株を分離培養し、以下の研究に用いた。 2.上記6種の菌株にエタノ-ルーd_6を添加後37℃に放置し、添加されたエタノ-ルーd_6と発生したエタノ-ルをGCーMS法で経時的(0〜24時間)に測定すると、いずれの菌株においてもエタノ-ルーd_6は放置時間の延長とともに緩除に減少した。一方、エタノ-ルは漸次微増し、総エタノ-ル濃度にはほとんど変化が認められなかった。 3.2種の菌株(E.coli)にエタノ-ルとエタノ-ル代謝に係わる酵素阻害剤3種を添加後37℃で反応させ、経時的(0.5、1、2時間)にエタノ-ル濃度を測定した。酵素阻害剤として、pyrasole(エタノ-ル脱水素酵素阻害剤)、triazole(カタラ-ゼ阻害剤)およびdisulfiram(アルデヒド脱水素酵素阻害剤)を用いた。pyrasoleおよびtriazoleでは、0.5時間ではエタノ-ル濃度に変化は認められなかったが、その後の濃度は漸増した。一方、disulfiramでは1時間までエタノ-ル濃度に変化はなく、2時間後には減少した。 4.上記2種の菌株にエタノ-ルと4種抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコ-ル、コリスチン)を添加し、経時的(0.5、1、2時間)にエタノ-ル濃度を測定した。その結果、クロラムフェニコ-ルの場合には、反応後(37℃)漸増し常時最も高いエタノ-ルの増加を示した。他の抗生物質では、クロラムフェニコ-ルと比較するとその増加率は小さいが、漸次エタノ-ルの増加が認められた。
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