全身性エリテマト-デス(SLE)には、様々な免疫異常が存在する。また、SLE患者が妊娠した場合、約3割に流・早産や子宮内胎児死亡を認める。これは胎盤の血栓症によるとされているが、この様なfetal lossと抗リン脂質抗体、特に抗カルジオリピン抗体との関係が注目されている。研究者は、SLE動物モデルマウス(NZB×NZWF1やMRL/lpv)から多数のモノクロ-ナル抗DNA抗体を作製し、それらの特異性ならびに腎炎・血管炎原性を分子レベルで解析してきた。今年度は、同様にSLEのモデルマウスからモノクロ-ナル抗カルジオリピン抗体産生ハイブリド-マ株を18種類樹立し、その生物学的特異性を解析し、以下の事実を得た。(1)モノクロ-ナル抗カルジオリピン抗体は、ssDNAにのみ反応するもの、ssDNAとdsDNAの両方に反応するもの、DNAには反応しないものの3種類が存在する。(2)モノクロ-ナル抗カルジオリピン抗体の多くは抗核抗体としての活性を有している。(3)モノクロ-ナル抗カルジオリピン抗体には血小板と反応するものがある。(4)モノクロ-ナル抗カルジオリピン抗体の一部に、血管内皮細胞に反応するクロ-ンがありそれらはいずれもが、グリコサミノグリカン(特にヘパリン)と反応する。 次年度は、以上の成果をもとに、両モノクロ-ナル抗体の妊娠マウスへの投与実験、免疫グロブリンのV領域のクロ-ニングによる抗カルジオリピン抗体の起源の探策等を主要なテ-マとして研究を継続してゆく予定である。
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