研究概要 |
慢性甲状腺炎の発症機序を解明する目的で、同疾患モデルであるマウス実験自己免疫性甲状腺炎におけるチログブリン(Tg)に対する自己免疫応答の特異性と細胞レベルにおける調節機構を解析した。この研究により以下の結果を得た。 1.マウスにTgを免疫し、TgあるいはTgフラグメントに対する応答性をin vitroリンパ球芽球化反応により解析したところ、Tgに高応答性マウスであるCBAマウスは、マウスTgおよびTgフラグメントに応答を示した。低応答性マウスであるB10およびBALB/cマウスは、Tgに応答を示さなかったが、一部のTgフラグメントに対し明らかに応答した。また、TgでなくTgフラグメントを免疫すると、BALB/cマウスはTgフラグメントにもin vitroで応答した。これより、低応答性マウスにもTgの特定の抗原決定基に対するT細胞クロ-ンが存在すると考えられた。 2.Tgに高応答性を示すC3H/HeNマウスに、マウスTgの他にヒトおよびウシTgを免疫したところ、甲状腺炎がマウスに明らかに引き起こされた。また、Tgに高応答性を示すB6C3F1マウスに、マウスTgおよびTgフラグメントを免疫したところ、分子量35,000以上のTgフラグメントにより甲状腺炎が誘導された。同様に、ヒトTgおよびTgフラグメントを免疫したところ、ヒトTgフラグメントによっても甲状腺炎が引き起こされた。これにより、甲状腺炎を引き起こすTgの抗原決定基は、種属間に共通の抗原決定基を含み、Tgに分子上の特定の部位であることが示された。
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