研究概要 |
近位尿細管と髄質外層集合管において研究を行った。1.近位尿細管。このセグメントにおいてはPTHの効果について検討した。PTH投与により管腔内へのH分泌が10秒以内に抑制される。この機序として管腔膜のNa/H交換輸送が抑制されていることを細胞内pHの測定より明らかにした。一方側底膜のHCO_3輸送は抑制を受けていなかった。またこの効果を発現する細胞内情報伝達系の検討では、c-AMPが主であり、IP_3、Caを介する系の関与は小さいことが判明した。来年度は細胞内Ca測定とカテコ-ルアミンの効果を検討する予定である。 2.髄質外層集合管。この尿細管の主作用はH分泌であり、この点について主に検討した。このセグメントには少なくとも3種類の細胞が存在しているので、画像解析システムにより細胞の種類の同定を行った。さらにこれらの細胞の各々において細胞内pHの測定を行い、細胞内pHの調節機序を解明した。主細胞においては体内への酸負荷の回復は完全にNa依存性であり、側底膜のNa/H交換輸送がこの機序であった。一方介在細胞においてはNaとHCO_3に非依存性のH排出機序が認められ、DCCD,NEM感受性よりHポンプと同定された。このHポンプは管腔膜に存在している。されに側底膜にはNa/H交換輸送とCl/HCO_3交換輸送が存在していることが示された。この検討により各細胞でのH/HCO_3輸送の基本的機構が明らかになり、来年度では、アシド-シス・アルセロ-シル時の調節と、アルドステロンの影響について調べる予定である。
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