1.近位尿細管に関しては、PTHの効果を検討した。尿の酸性化に重要な役割を果たす足底膜のNaーHCO_3共輸送に対しては、PTHは影響を与えないことが明かになった。一方、頭頂膜のNa/H交換輸送に対しては抑制的に働き、この結果、細胞内pHは0.05低下する。PTHの細胞内シグナリングメカニズムについても検討を行い、上述のPTHの効果が総てcAMPによって再現されることが確められた。一方、細胞内Ca、CーKinaseの活性化は尿酸性化を抑制したが、上の2つの輸送タンパク活性には無効であった。以上よりPTHの効果は、cAMPを介し、頭頂膜のNa/H交換輸送を抑制するのが主たる機序と結論づけられた。なお細胞内CaはPTHにより上昇するが、その程度は小(50nM)であった。 2.遠位集合管については、髄質外層集合管に存在する2種類の細胞(主細胞と介在細胞)において、イオン輸送をHイオンを中心に検討した。2種の細胞は、機能的、形態的に識別可能であった。主細胞の頭頂膜にはH/HCO_3輸送体は認められず、足底膜にはNa/H交換輸送、NaーHCO_3共輸送体が認められた。介在細胞の頭頂膜にはNEM、DCCD感受性のHポンプが存在し、このポンプが尿酸性化に働いていると考えられた。足底膜にはNa/H交換輸送とCl/HCO_3交換輸送の存在が認められた。 これらの輸送体に対するアシドシ-スとアルドステロンの効果をさらに検討した。アイド-シスは、介在細胞の頭頂膜のHポンプ、足底膜のCl/HCO_3交換輸送をおよそ2倍増加させる。以上より、生体でのアシド-シスに対する尿細管の反応は、一部はアルドステロンを介していると推察された。
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