研究概要 |
1,5mM NaCN+5mM 2ーdeoxyーDーglucoseによるATP減少時における細胞内pH(pHi),Ca^<2+>([Ca^<2+>]i)ー左記薬剤を用いグルコ-スを含まない溶液中で細胞内ATPを減少させたところ、添加直後より細胞内Ca^<2+>([Ca^2]i)は速やかに増加し、10分後には投与前の約8ー10倍に達した。15分後NaCNを除去すると[Ca^<2+>]iは5分以内に前値に戻った。pHiもグルコ-スを含む場合と比べて速やかにかつ強く低下した(ΔpH=-0.046/min)。Ca^<2+>拮抗剤やEGTAはNaCNによるpHiの低下を増強した(ΔpH=-0.069/min)。これに対し細胞内貯臓部からのCa^<2+>流出を阻害するTMBー8には同様の効果は認めなかった。 2.シクロスポリンによる細胞障害ー樹立細胞株LLCーPK1を用いての実験では、5μMまたは10μMのシクロスポリンを加えた培養液で24また48時間培養すると、細胞の空胞化が明らかである。細胞障害における[Ca^<2+>]iの関与を調べるためにFuraー2を用いて[Ca^<2+>]iを測定した。10^<-6>Mのシクロスポリンを添加し、浮遊した状態とカバ-グラス上に単層に培養させた状態で継時的に[Ca^<2+>]iを測定したが、6時間後でも変化は認めなかった。薬物による細胞障害時には、Ca^<2+>より、Na^+やK^+などのイオンの細胞膜の透過性の変化が重要な因子であるとする報告(Smith,MT.,et al.Science 213:1257ー1259,1981)もあり、シクロスポリン投与時のNa^+,K^+ーATPaseを遺伝子レベルで検討することにした。それに先立ち、実験手技や実験条件を確立するために培養メサンギウム細胞のNa^+,K^+ーATPaseを遺伝子レベルで測定した。甲状腺ホルモンによるNa^+,K^+ATPaseのmRNA発現の増加、さらにαー1,αー2,βー1 isoformの発現の差などの重要な知見を得ることができた。手技的にも問題はなく、薬物による細胞障害におけるNa^+,K^+ATPaseのmRNAの発現の変化を、より長期の[Ca^<2+>]i測定と組み合わせて検討していく予定である。
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