研究概要 |
【目的】強皮症(PSS)ー多発性筋炎(PM)重複症候群に特異的に見いだされる抗Ku抗体の対応抗原(70k/80kDaのDNA末端結合蛋白)をコ-ドするcDNAは大腸菌発現産物を利用し,抗Ku抗体の高感度検出法を開発することを目的とした. 【方法】1)ヒト脾臓mRNA由来λgt11 cDNAライブラリ-より,70kDおよび80kDーKu蛋白をコ-ドするcDNA(K14およびK71)をそれぞれ分離した.2)K14およびK71ファ-ジ大腸菌をY1089株に感染させてライソゲン化し,これを増殖させて,IPTG存在化にKu蛋白ーβ galactosidase融合蛋白を発現させた.3)不溶性の融合蛋白を遠心法で回収し,SDSサンプルバッファ-に溶解してSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分画した.4)融合蛋白を含むゲルスライスを切り出して,電気泳動的に融合蛋白をゲルから溶出して精製した.5)精製融合蛋白をELISAプレ-トに固相化し,抗Ku抗体出のためのELISAを開発した.6)膠原病126例と健常人20例の血清を検索し,抗Ku抗体の出現頻度に検討した. 【結果】1)ゲルより溶出した精製融合蛋白はSDS電気泳動で単一のバンドを示し,免疫ブロットで抗原性が保たれていることを確認した.2)70kDーKuおよび80kDーKu融合蛋白を固相化して作製したELISAで検出された抗Ku抗体陽性率は,Overlap症候群(13例)でそれぞれ77%および46%と高い陽性率を示し,特にPSSーPM重複例に陽性率が高かった.これに対してSLE(57例)ではそれぞれ7%と4%にすぎず,他の疾患も陽性率は10%以下であった.抗体価もOverlap症候群で高い症例が多く,他の疾患ではPSSの1例を除きいずれも低値であった. 【結語】リコンビナント自己抗原を利用したELISAは,抗Ku抗体の検出に有用と考えられた.
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