研究概要 |
マウス腹腔内に,ヒト顆粒球を注入した後、脾細胞を取り出し、腫瘍細胞と反応させ触合細胞を作製した。次いで、蛍光抗体法を用いて顆粒球に特異的な抗体を産生する細胞を選び出し、大量のモノクロ-ナルな抗ヒト顆粒球抗体を得た。その中から顆粒球の遊走能または、活性酸素産生能を抑制するモノクロ-ナル抗体(mAb)TM316、及びTM2を得た。TM316は顆粒球機能において遊走能のみを特異的に抑制する抗体で、3種類の遊走因子に対する遊走能を抗体濃度依存性に抑制し、各遊走因子に対する抑制において、同程度の抑制率を示した。しかし、TM316は顆粒球の自動能は抑制しなかった。このことからTM316は遊走能に関連する膜表面抗原を認識する抗体であることが示唆された。一方、TM2と名付けた抗体は、顆粒球の遊走能抑制に加え、活性酸素産生能を抑制した。これらの抗体と反応する膜表面抗原の精製は、不平衡PH勾配電気泳動(non-equilibrium PH gradient electrophoresis,NEPHGE)法を用いた、2次元電気泳動や、CNBr-activated sepharose 4BにmAbをコ-トしこれに、ヒト顆粒球膜成分を反応させることにより行った。得られた精製蛋白(TM316対応抗原)をウサギに繰り返し免疫し、ポリクロ-ナル抗体を得た。フロ-サイトメトリ-解析の結果このポリクロ-ナル抗体は、顆粒球と反応し、さらに、ヒト顆粒球の3種類の遊走因子に対する遊走能を抑制した。また顆粒球膜蛋白をニトロセルロ-ス膜に転写し、ウサギ抗血清をプロ-ブとしたWestern Blottingにおいて、mAbTM316と同じ分子量の場所に発色を認めた。現在は、この抗原分子の超微量アミノ酸配列解析機によりアミノ酸配列を決定中である。今後はこのアミノ酸配列に基づき、これを規定する核酸のオリゴヌクレオチドを合成する。さらに顆粒球を大量に集め、mRNAを精製した後、これからcDNAを合成して顆粒球のcDNAライブラリ-を作製する。TM2対応抗原については現在精製中である。
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