研究概要 |
ウイルス感染が結合織疾患(CTD)の発症に関与する可能性が従来より考えられていた。1986年にSalahuddinらによって、免疫不全患者より新しいヘルペス群ウイルス、HHVー6が分離された。これはTリンパ球にも感染するので、自己免疫疾患との関連性が想定された。そこで、本ウイルスとCTDとの関連性を検索した。 間接蛍光抗体法と中和反応とで、各種CTD66例の血清の抗HHVー6抗体価を測定した。その結果、CTDでは健常人に比し、抗HHVー6IgG,IgM抗体が有意に高値であった。しかし、他のヘルペス群ウイルスであるEBウイルス,サイトメガロウイルス,単純ヘルペスウイルスなどに対する抗体価とは必ずしも相関していなかった。また、各種自己抗体との相関をみたところ、抗HHVー6抗体価は抗nuclear RNP抗体価と相関した。しかし、抗DNA抗体や抗SSーA抗体などとは相関しなかった。このことより、抗HHVー6抗体価が高値である理由は、多クロ-ン性B細胞活性化現象によるもののみでは説明できなかった。このウイルスの持続感染や、ウイルス抗原とnuclearとの抗原性のホモロジ-が存在する可能性が示唆された。これはHHVー6がCTDの原症機序に関与しうることを示唆するものである。 CTDにおいて本ウイルスが持続感染している可能性を検索した。末梢血単核球,唾液,皮膚生検組織などからウイルスの分離を試みた。しかし、現時点では、ウイルスは分離できなかった。今後は、持続感染していると予想される本ウイルスを、感度のよいDNA検出法であるPCR法などを用いて検討することが課題であると考えられた。
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