従来、未知分野であった赤血球の3ケト胆汁酸還元能について研究実施計画に沿い検討し、下記の成果を得た。 1.赤血球ケト胆汁酸還元酵素の部分精製と特質の検討。 赤血球ケト胆汁酸還元酵素の部分精製を押し進めて来た研究過程において、肝内ケト胆汁酸還元酵素を特異的に抑制するキクロロマ-キュリベンゾネイトが赤血球由来のケト胆汁酸還元酵素を全く抑制しないことを認めた。本所見は両還元様相が類似していても、両酵素は異なることを推察させ、生化学的特質の解明が一層重要となった。 2.赤血球還元機構を加えた胆汁酸代謝マップの作製 全血成分ないし赤血球浮遊液を用いた試験管内実験、およびデヒドロコ-ル酸1gを頚静脈投与したヒトでの負荷試験から、投与ケト胆汁酸の最低2%以上は大循環血中において数分以内に3αハイドロキシ体に還元されることを認めた。この場合3αハイドロキシ体は速やかに肝に摂取され、血中から消失するので、赤血球のケト胆汁酸還元能は現在予測されてる値より、はるかに大きいと考えられ、その詳細を検討している。一方、肝内3ケト胆汁酸還元酵素活性および代謝様相については初代培養肝細胞を用いて、培養液中に出現する^<14>Cデヒドロコ-ル酸還元体の分析から反応動態を追求して居る。 3.赤血球還元機構由来の血中胆汁酸の検討 従来、正常ならびに各種肝胆道疾患での血中胆汁酸の分析では3ケト胆汁酸はほとんど存在しないことが明らかにされている。この事実は腸管内で3ケト体の二次胆汁酸が腸内細菌により生成され、吸収されても末梢血中では赤血球内ケト胆汁酸還元酵素により、速やかに3α。ハイドロキシ体へと変化するためと考えられる。
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