研究概要 |
赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素の役割とその特性について、研究実施計画を基に検討し、下記の成果を得た。 1.赤血球内ケト胆汁酸還元酵素の部分精製と特性に関する検討 正常人の赤血球を使用してケト胆汁酸還元酵素の部分精製を継続し、本酵素系は肝細胞の細胞質分画に存在する3αハイドロキシステロイドデハイドロゲナ-ゼに類似するが、同一酵素でないこと、還元酵素反応は迅速に発現すること、至適PHは7.0であること、熱処理により失活することを認めた。 2.赤血球還元機構を加えた胆汁酸代謝マップの作製 in vivo実験とin vitro実験から検討を試みた。in vivo実験は臨床面で利用されているデヒドロコ-ル酸の経静脈負荷を行い、未梢血中に出現する還元代謝物3αハイドロキシ胆汁酸の定量分析を施行した。in vitro実験はヒト赤血球とデヒドロコ-ル酸のインキュベ-ション行い、生成還元物を分析した。その結果、赤血球によるケト胆汁酸の還元代謝能は肝のそれに比較し1/10であり、Cー3位のケト基のみに限定されることを見出した。つまりデヒドロコ-ル酸の赤血球による還元経路はあくまでもminor経路であることが推定され、投与されたデヒドロコ-ル酸の15%程度が赤血球により3αハイドロキシ7,12ケト胆汁酸となり、本還元体はその後肝に摂取されて、3α,7αダイハドロキシ12ケト胆汁酸もしくは3α,7α,12αトリハイドロキシ胆汁酸に還元代謝されることを明らかにした。 3.赤血球還元機構由来の血中胆汁酸の検討 正常ならびに各種肝胆道疾患での血中胆汁酸分析を行い、3ケト胆汁酸はほとんど存在しないことを明らかにした。
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