赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素系の役割とその特性について研究実施計画に沿って検討し、下記の成果を得た。 1.赤血球内ケト胆汁酸還元酵素の部分精製と特性に関する検討。 酵素の部分精製はBerseusの方法に従って実施し、現在も進行中である。本酵素系の特質については試験管内実験から、(1)至適温度は37〜40℃、(2)至適pHは7.0、(3)ケト胆汁酸の還元能はC3位のケト基にのみ限定される、(4)肝における3αーHSD酵素とは作用が類似するも同一でない、(5)70℃、2分間の加熱で失活することを明らかにした。 2.赤血球還元機構を加えた胆汁酸代謝マップの作製。 デヒドロコ-ル酸の経静脈負荷試験から検討を加えた。従来デヒドロコ-ル酸はその全てが肝で還元代謝を受け、胆汁中ヘモノハイドロキシ体20%、ダイハイドロキシ体70%、トリハイドロキシ体10%となってい排泄されると考えられて来た。したし本研究によりデヒドロコ-ル酸はその一部が大循環血中で赤血球によりC3位のケト基が還元され、モノハイドロキシ体となり、その後肝に摂取されて代謝を受ける副経路が存在することを明らかにした。その程度は負荷量の10ー20%に及ぶため、本副経路は生理的意義を有するものと判断された。この場合、上記成績はデヒドロコ-ル酸および代謝還元体の肝摂取速度を度外視したものであり、したがって20%以上のデヒドロコ-ル酸が本副経路を経由することが考えられ、現在詳細な検討を行っている。 3.赤血球還元機構由来の血中胆汁酸の検討。 これ迄施行した血中胆汁酸分析で、末梢血中に3ケト胆汁酸を認めなかった。本所見から腸管内で3ケト胆汁酸が生成され、それが循環血中に流入しても、赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素により速やかに、3αハイドロキシ体に還元されることが推察された。
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